花束もデザイナー指名買い

花デザイナーの名前やブランド名を前面に出して花束やフラワーアレンジメントを販売する生花店が増えている。結婚式やクリスマスなどのイベントはもちろん、折々の贈答用や自宅の飾り花向けにも、デザイナーの商品を指名買いする客が目立つ。クリスマスや年始向けに時期限定の商品も登場している。

●生花販売の老舗、日比谷花壇では、ギフト花のカタログで渡辺昭彦氏など同社の代表的な花デザイナーの名前と顔写真を入れた「デザイナーズフラワー」を売り出している。初めて実施した昨年は2人のデザイナーだったが、今年の冬は5人に増やした。今年の母の日商戦では、2万1000円もする渡辺氏のアレンジ200セットが完売。「デザイナーのイメージで花を買う客が予想以上に多い」と驚いている。
今年のクリスマス向けでは、50個限定の同氏のクリスマスリース「ノーブル」(2万1000円)がすでに売り切れ。厳選した花材・資材を前もって調達している商品なので、増産は難しいという。
同社は10月に開店した「バーニーズニューヨーク」銀座店内の生花売り場もバーニーズと共同で運営する。ここではカタログにも登場した花デザイナーの石井千秋さんが店頭に立つ。販売の主力は、店頭で石井さんが顧客に直接注文を聞いてつくる特注の「オートクチュール花」。中心価格は1万-5万円。自宅用の飾り花として大ぶりなアレンジの注文も多く、男性客も目立つ。
クリスマス向けには「バーニーズでギフトを選ぶ楽しみを」と、銀の器に生花を挿したシックなキャンドルアレンジなど手ごろなギフト花(5250円から)も用意した。銀座店・横浜店限定という。
トップデザイナーが生みだす、個性あふれる花の芸術。「冬のデザイナーズアレンジメント」

●同じ銀座にある生花店「ジェーン・パッカー」ロンドンの有名花デザイナー、ジェーンパッカーさんの東京店。ファッションブランドのようにデザイナー名を冠した花店だ。ファッションの流行色と白や黒のモノトーン包装を組み合わせたスタイルに人気がある。今年、ロンドンから届いたクリスマステーマは「ヴィンテージ」。日本のチーフデザイナー桐ヶ谷あゆみさんがこのテーマに沿ってアンティーク風ビーズやパール、少しくすんだ色の花を使って、日本市場に合わせた贈り花を開発した。
同店では12月初めにクリスマス用の展示を始めたが、特に人気が高いのが、白い帽子のような大きなラッピングにくるまれたブーケ(1万500円)やビーズのツリーを使ったアクリルボックス入りの花(5250円)だ。また小さなフェルトバッグを使った花アレンジは1570円と求めやすく、アクセサリーのように買われている。同店の今年の売上高は昨年比50%増の見通しと好調だ。正月用のモダンなアレンジの準備も始めている。

●六本木ヒルズにある「ニコライ・バーグマン」は、デンマーク出身のバーグマン氏のフラワーアレンジを専門にする「花のブランドショップ」だ。普通に生花店のように花材を表に出すことは控え、花のアレンジをまるで洋服や化粧品のように並べたディスプレーが斬新だ。
店頭で目を引くのが、ボックスを使ったクリスマスギフト花(大1万500円、小3150円)。赤、金のベースカラーに銀や紫を効果的に使って、生花やドライフラワーを美しく箱に詰める。ふたを開けたとき、多くの人が驚くといい、週末には飛ぶように売れていく。
週に3、4回店頭に立つ同氏に、直接ブーケやアレンジを頼みたいと指名する客も多く、周辺の高級マンションに住む客からは5万円以上もするインテリア用の大型アレンジの依頼もある。
どの店も近隣の客ばかりでなく、遠方からの来客や配送注文も多い。生花店といえば地域密着型が主流だったが、今後はブランドやデザイナーを指名して花を「お取り寄せ」する傾向がより強くなるだろう。生花店にもファッションのように個性やスタイルがはっきりと求められつつあるようだ。

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